【論評】二度の「戦力外」は、終わりの合図ではない。楽天・加治屋蓮が証明した、不屈の「再起動」力

論説・オピニオン

プロ野球の世界において、「戦力外通告」は死刑宣告に近い響きを持つ。 一度でもそこから這い上がるのは至難の業だ。 では、「二度」ならどうだろうか?

東北楽天ゴールデンイーグルス、加治屋蓮。 この男の2025年シーズンは、私たちに「プロフェッショナルとは何か」を無言の背中で語りかけてくるようだった。

ソフトバンク、阪神、そして楽天。 3つのユニフォームを渡り歩き、不死鳥のように蘇った右腕の「凄み」に、今こそ光をあてたい。

1. 栄光と挫折のジェットコースター

彼のキャリアは壮絶だ。 JR九州からドラフト1位でソフトバンクに入団。2018年にはリーグ最多の72試合に登板し、日本一に貢献するという栄光を掴んだ。 しかし、故障に泣き、2020年オフに最初の戦力外通告を受ける。

拾われた阪神でも、防御率2点台を記録するなど結果を残したが、昨オフ(2024年)、自身二度目となる非情な通告を受けた。 「もう限界か」。外野がそう囁く中、彼は楽天の地で三たびマウンドに立つことを選んだ。

2. 「ベテラン」の枠に収まらない若々しさ

そして迎えた2025年シーズン。 開幕こそ一軍を逃したものの、4月に昇格するやいなや、圧巻の投球を見せた。 特筆すべきは、4月29日の西武戦から6月13日の阪神戦にかけて記録した「16試合連続無失点」だ。

最終的に54試合に登板し、18ホールドをマーク。 この数字以上に驚かされるのは、彼のプレースタイルだ。 度々150キロを超えるストレートに、鋭く落ちるフォークとカーブ。 そこには「技巧派に転向して生き残る」という枯れた姿はなく、力でねじ伏せる**「若々しさ」**がみなぎっていた。

二度のクビを宣告されてもなお、彼は自分のボールを信じ、錆びつかせることなく磨き続けていたのだ。

3. チームの危機を救う「経験」という武器

楽天は今、大きな転換期を迎えようとしている。 長年チームを支えてきた守護神・則本昂大投手が海外FA権を行使し、退団の可能性も囁かれているからだ。

もし柱が抜ければ、ブルペンは苦しくなる。 だが、楽天には加治屋蓮がいる。 修羅場をくぐり抜け、三球団のブルペンを知る彼の経験は、来季、より一層輝きを増すはずだ。

「戦力外」とは、能力がなくなったことではない。「場所が変われば、まだ輝ける」という証明。 加治屋蓮の投げ込む一球一球は、何度つまずいても立ち上がろうとする全ての人の心に、勇気の火を灯し続けている。

(了)筆者:灯屋新聞編集部 橋野しおり

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