【論評】「打球音が変わった」。西純矢が糸井嘉男から受け継いだ、投手から野手へ飛躍するための「超人のDNA」

論説・オピニオン



阪神タイガースの秋季キャンプから、胸のすくようなニュースが飛び込んできた。
10月に投手から野手への転向を決断した西純矢選手が、糸井嘉男SA(スペシャルアンバサダー)から指導を受け、覚醒の兆しを見せているというのだ。
​私は、日ハム時代から糸井嘉男という選手を追いかけ続けてきた。
だからこそ断言できる。
今の西選手にとって、「糸井嘉男」という教科書以上の存在はいない、と。


​1. 「投手出身」にしか分からない壁と可能性
​なぜ、糸井氏の指導がこれほどまでに西選手に響くのか。
それは、糸井氏自身がかつて「悩み多き投手」から「超人野手」へと変貌を遂げた、成功の体現者だからだ。
​投手として入団し、マウンドでの苦悩を経て、バット一本で生きる道を選んだ。
その恐怖も、孤独も、そして「投手出身だからこその身体能力(強肩・強靭なバネ)」の活かし方も、糸井氏はすべてを知り尽くしている。
​他のコーチが言う「もっと振れ」と、同じ道を歩んだレジェンドが言う「もっと振れ」では、言葉の重みが違うのだ。


​2. 小さくまとまるな。「怪物」の封印を解く言葉
​興味深いのは、西選手自身の自己分析と、糸井氏の評価のズレだ。
当初、西選手は「自分は長距離打者ではない」と考えていたという。野手転向したてで、確実性を求めようとしていたのかもしれない。
​しかし、糸井氏はそれを見逃さなかった。
「もっともっと振っていって、ホームランを入れられる選手になれ」
「もともと放り込む力がある」
​これは技術指導であると同時に、西選手が勝手に作った「自分はこの程度の選手」という枠(リミッター)を破壊する作業だ。
「お前はもっとやれる。俺と同じ景色が見えるはずだ」。
そう背中を押されたことで、西選手の中に眠っていた「野手としての野性」が目を覚ましたのではないか。


​3. 響いた「音」は、覚醒の合図か
​指導の後、西選手はこう語った。「打球の音が変わった」と。
​バットがボールを捉えた瞬間の、乾いた破裂音。
それは、彼が迷いを捨て、自分のポテンシャルを信じてバットを振り抜けた証拠だ。
​かつて日ハムのファンを、そして阪神ファンを熱狂させたあの「超人イズム」が、今、若き才能へと受け継がれようとしている。
西純矢が甲子園のスタンドに特大のアーチを描く日。それは、そう遠くない未来かもしれない。
​(了)筆者: 灯屋新聞編集部 論説委員 橋野しおり

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